連載コラム 漢方豆知識⑧ 五臓の肺
五臓の「肺」の役割
「肺(はい)」は東洋医学における「五臓」の一つで、五行説では金に属する臓です。東洋医学的な肺は、呼吸器官としてみる現代医学的な肺の働きに加え、気や水を調節するなどの役割もあり、別物となっています。肺には呼吸機能として大気を取り込む働きがあります。大気から体に必要な清気(「気」の元となる)を取り込み脾へ送ります。脾は送られた清気から運化作用により気、水を作り出します。このように気の元は肺に属するので肺は気を蔵する、気を主るといわれます。
また、肺の働きとして「宣発」「粛降」があります。
宣発(せんぱつ)は不要になった気や水を外へ発散させる作用です。呼気を排出するときに不要な気を外へ出し、不要な水は発汗を調節することにより排出します。また、気・水を全身に送り届ける作用でもあります。脾で生成された気、水は昇清作用により肺へ送られ、そこから肺の宣発作用で全身の組織や皮膚の隅々まで行き届きます。皮膚に気が張り巡らされることで体表を守る意味もあります。
粛降(しゅくこう)は気・水を下降させる作用です。取り込んだ自然の気を下降させ腎に納めます。なので呼吸は肺と腎の共同作業といえます。また体内の水を下降させ膀胱に輸送して排泄します。こうして肺は腎と連携し水分代謝の役割を果たします。
この発散する方向の宣発と下降させる方向の粛降のバランスがとれることで全身の気と水のめぐりが保たれます。肺が冷えて機能が弱ると水をさばけなくなり、咳、発汗、むくみなどにつながるので、肺の冷えには注意が必要です。
肺と他の器官との関係など
五臓の肺と六腑の大腸は表裏の関係にあり、肺の宣発粛降による気、水の供給で大腸のぜん動(便を送り出す動き)を支えます。したがって肺の失調は便秘の原因にもなります。脾と肺は五行の相生関係なので脾が弱ると肺気も弱まります。また肺の不調は腎にも波及し呼吸の不調(咳など)を引き起こし、水湿も停滞します。他の臓腑とのバランスも養生の重要なポイントとなります。
また肺は皮膚と密接な関係にあります。肺が皮膚を守る気(衛気)をめぐらすことで外邪の侵入を防ぎ、うるおいを保ち、適切な体温調節が行われます。五行「燥」の時期の秋には肺と皮膚がともに不調に陥りやすいため、乾燥対策をする必要があるのです。