連載コラム 漢方豆知識⑤ 五臓の肝
五臓の「肝」の役割
「肝(かん)」は東洋医学における「五臓」の一つで、五行説では木に属する臓です。肝は現代医学的な肝臓とは異なり実体のない観念的な意味も持っています。五臓の肝の働きは、身体の生理機能や精神活動のバランスを保つ上で重要な役割を果たしています。肝には様々な働きがあり、例えば疏泄(そせつ)、臓血(ぞうけつ)、筋(すじ)をつかさどるなどがあり、また感情や精神の状態にも影響を与えます。
疏泄(そせつ)作用は気(エネルギー)や血の流れをスムーズにめぐらせる働きです。気のめぐりは精神状態にも影響し、気が減って流れなくなると抑うつ状態になり、滞って昂ぶると怒りっぽい状態になります。肝は気の流れをコントロールすることで精神状態を正常に保ちます。また、血をめぐらせることで他の臓のはたらきを助けます。
臓血(ぞうけつ)作用は全身に放出する血の量を調節したり、血を貯蔵する働きです。肝血が不足すると各所の生理活動が不十分になり循環器に関連する症状などを引き起こす原因になります。また血の貯蔵が不十分だと必要時の血液凝固能が低下し出血症状が起こりやすくなります。そのため肝の状態は血液状態と関係してきます。
筋を主るとは腱、繊維、関節などに血を送ることでその運動を保つことからいわれます。 そのため肝の不調は筋骨の痛み、ひきつれ、しびれの原因となる場合があります。
肝と胆、他の五臓との関係
肝と胆は表裏の関係にある臓腑で、胆は機能的に胆汁の貯蔵・排泄を行い消化、代謝を助ける働きがあります。また、胆は「決断を主る」といわれ精神機能の一部も担います。 胆の不調は肝にも影響し過剰な働きはイライラや不眠などに、衰弱すると決断力の低下などが起こるといわれます。五臓には相生・相剋の関係があるため、肝の状態は他の器官に影響します。五臓の心とは相生関係のため肝の不調、とくに肝血の不足は心に必要な血も減少させます。また肝の過剰活動は相剋関係にある脾の働きを押さえつけ弱らせます。