連載コラム 漢方豆知識⑨ 五臓の腎
五臓の「腎」の役割
「腎(じん)」は東洋医学における「五臓」の一つで、五行説では水に属する臓です。腎は、体に不要な老廃物をろ過して尿を生成する現代医学的な腎臓の働きも持ちますが、それに加え成長・発育・生殖などに幅広い役割を持ち生命力の源となる重要なものです。腎の働きとして「蔵精」「主水」「納気」が主にあげられます。
「蔵精」とは精を貯蔵する働きのことです。精とは人体の成長、発育、生殖や各臓腑、生命活動を維持するためのエネルギーのことです。精には親から受け継ぐ先天の精、取り込んだ飲食物から作り出される後天の精に分けられます。
腎に蓄えられた精により体を成長させる、髪や骨格、歯を丈夫にする(成長・発育)機能、生殖機能が保たれます。精が徐々に減少すると老化が始まるといわれ、この老化の調節も腎が関係します。
「主水」とは、体内の水分代謝を管理する働きを指します。全身を巡り終わった水分のうち、体にまだ必要な水分は再び肺へ押し上げられ再循環し、不要な分は膀胱へ送られ体外に排出されます。この選別は腎の働きにより行われます。膀胱に溜まった不要な水を外へ押し出すのも腎の気化作用の力によります。
「納気」とは、取り込んだ吸気を腎に納める働きです。外から気を取り込むのは肺の働きですが、吸入された後は腎の働きで体内に納めます。腎と肺の連携で気を納めます。
このように腎の働きは生命活動の維持のためとても重要です。腎の働きが弱った状態(腎虚)は骨や髪、生殖機能の不調、頻尿などの尿トラブル、だるさや息切れ・咳などの呼吸関係のトラブルを引き起こす場合がありますので、腎の養生は重要になります。
腎と他の器官との関係
腎に該当する腑は膀胱といい、表裏の関係にあります。この膀胱も現代医学的なものと異なり、不要な水分を溜めて尿を生成する機能を担います。生成された尿は腎の作用により体外へ排出されます。相生関係から、肺は腎を助け、腎は肝を助けます。そのため肺が弱ると腎の働きも影響を受け、咳など呼吸の不調を引き起こす場合があります。同様に腎の不調は肝の不調も引き起こし、肝の担う気血の調節などに影響を与える場合があります。また、「腎は耳に開孔する」という言葉があり、腎の不調が耳の不調にもつながる場合があります。
腎は基本的に充実することは少なく、その不調は弱ることがほとんどです。そのため、腎の働きを補う養生を心がけることが重要になります。